万吉や首はずせ



むかーし昔・・・
あるところに万吉という男が住んでおった。

万吉は、物心ついた頃から自分の力で立派な家を建てて住んでみたいという夢をもっており
そのために子供の頃からせっせと働いてきたのじゃった。

そうしてお金を少しずつ貯めていき、二十年の月日が流れた。

「これで家を建てることができる!」と大喜びの万吉じゃったが、大工がよく調べてみると
何と、柱一本分だけお金が足りなかった。

「・・・何も、そう急ぐこともあるまいて。もう一稼ぎしたらどうだい?」と大工は勧めたのじゃが
どうしてもこの二十年目に家を建てたかった万吉は
「よし、わかった。もう一晩待ってくれ! 柱はきっとなんとかする!」
と言い、一晩待ってもらう事にしたそうな。



・・・そうして・・・その夜。



万吉は墓場に忍び込み、その墓場の中で一番立派な、木で出来た柱の形をした墓を引っこ抜き
あろうことかその柱に刻んであった名前を削り、さらに柱の上の屋根のような飾りを 斧で切り落として
そのまま持ち去ってしまったのじゃった。。



あくる日、やってきた大工にその柱を見せると
「これは立派な柱だ!これなら良い家が建つ!」と喜ばれたので、万吉もホッと胸を撫で下ろしたそうな。



やがて万吉の家は無事に完成し、喜び勇んでそこに移り住んだ。
移り住んだその日の夜は、あまりに嬉しかったせいで・・なかなか寝付けなかったのじゃが
それでも昼間の疲れが出たのか、しばらくして万吉はうとうとしはじめたのじゃった。

そうして・・・
こんな夢を見たそうな。


夢の中で万吉はどこともつかないような場所を歩いておった。
遠くで何か恐ろしい声が響いてくる。。

「・・・・・万吉や・・・首はずせ・・・・万吉や・・・・」
という声が地面から聞こえてきたかと思うと、万吉の足元の土がいきなり盛り上がって
その中から死人の腕が出てきて、足首をギュッ!と掴まれてしもうた。


「うわああぁぁぁーーーーー!!」
と、そこで目が覚めたそうな。

「何だ夢かぁ・・・・妙な夢を見たもんじゃなぁー・・・。」
万吉は、自分が疲れてるせいだろうと思い、気にも留めんかった。



しかし・・・

夢はその日だけでは終らんかった。

次の日も、またその次の日も、万吉は同じような夢に悩まされたそうな。


夢の中で、またあの気味の悪い自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「・・・・万吉や・・・・・首はずせ・・・・万吉や・・・・首はずせ・・・・・。」
その途端・・・土から出た死人の両手に、万吉は首を掴まれ、
「うわあああ!!!」と、冷汗だらけで真夜中に目を覚ましておった。

そうして、毎日同じ夢ばかり見ているうちに・・・
万吉はだんだんとやつれ、仕事もろくに出来んようになってしまったのじゃった。





ある日のこと。
ほとほと困り果てた万吉は、近くの祈祷師の所へ相談に行き、
自分の家に来てもらったそうな。

祈祷師のお婆さんの儀式が終った後、お婆さんは万吉にこう言ったのじゃった。

祈祷師「・・・・この家には死んだ者の恨みがある。」

万吉「死んだ者の恨みじゃと・・・!?」

祈祷師「そうじゃ、何か思い当たる事はござらんか? ・・・・恨みが柱に出とるんじゃ。。」

万吉「は、柱・・・・!?」

万吉はすぐに、自分が墓場から持ち帰った、せがき柱のことを思い出した。

万吉「あの柱が・・・・。」

男はすぐに大工を呼んで、自分の持ってきた柱を、家のどこに使ったかを聞いたそうな。

「その柱はこれだ。」と大工が柱を指差すと、みるみるうちに・・・柱に文字が浮かんできた。

「こ・・・これは・・・・・・!?」




その柱には、万吉が綺麗に削ったはずの・・・経文や名前がくっきりと浮かび上がっておった。
しかも、柱は逆さまに立ててあったのじゃった。




万吉はすぐにその柱を外して、墓場の元にあった場所に戻し、別の木で柱を作ったそうじゃ。

しかし、その柱では家を支えることは難しかったらしく・・・
程なくして、万吉の家は潰れてしまったそうな。



そうして万吉は・・・


住む家を失い、仕事も失ってしまったと・・・いうことじゃ。




(終わり)


(注:このページは、2ちゃんねるのオカルト板に2000/05/20〜2002/11/05まで存在したスレッドである
【懐かしい】アニメ日本昔話はオカルト満載【語れ】に、住民の>>120さんがかなり詳しく投稿されたお話を
元にして、管理人がタイトルを探し、さらに昔話の語り部口調に編集してUPしたものです。
この場をお借りして、>>120さんに心から感謝します。本当に有難う御座いました。)


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