(ナレーション:市原悦子さん)






昔・・・・

茨城の山の中でのことでした。。



道に迷って困っている、二人の若い坊さんがおりました・・・




月も無く、真っ暗な闇の中で・・・

時折狼の遠吠えが聞こえます。。






その時一人が明かりを見つけました。





ここから遥かに谷を下ったところですが、

確かにともし火が見えます。



仏様のお導きじゃろうー助かったぁー。と言って、

二人は大喜びでその家へ向かいました。





すると・・・




家に近づくにつれ中からぷ〜んと、美味しそうな匂いが漂ってきました。




坊さん「お頼み申します!」





老婆「どぉなぁーたかなぁ・・?」




隙間だらけの戸の間から中を覗くと、そこには・・・



白髪頭に頭巾を被った、痩せーたお婆さんと、

若くて美しい娘さんが、囲炉裏で何か美味そうな肉を、焼いているところでした・・・。





老婆「お入りなんしょ。戸は開くでなぁぁ・・・」





旅の坊さんたちは言われるままに戸を開けて、中に入りました。


老婆「おやぁ・・?・・怪我しとるでねぇーか。」


お婆さんは怪我をし、疲れ果てた様子の坊さんを見ると

早速寝床を作り始め・・・



元気が出るようにと・・親切に肉を食べるよう、勧めてくれたのですが・・・

仏に仕える坊さんは、肉を食べることは出来ません。



娘「もってぇねぇぇ(勿体無ぇ)・・・血が出てるぅ・・・」

坊さん「・・・ぇぇ??」

老婆「うーんもってぇねぇ。こんなボロ屋に坊さまに泊まっていただいて
    もってぇねぇことで・・」




お婆さんは坊さんに手を合わせ、食べられんのならせめて先に休んでくだされ。と言うので・・

坊さんたちはお婆さんの親切を、有難く受けるのでした・・・。





そして暫くするとお婆さんと娘さんは、肉を食べ始めました。


その食べっぷりは物凄く、大きな肉の塊をむさぼるように、骨まで・・・

ガツガツと食べるのでした・・・。




老婆「思わぬご馳走が・・(ムシャムシャ)・・手に入ったで今夜は、
    全部食っても大丈夫じゃ。 (モグモグ)明日が楽しみじゃぁぁ・・・」




(肉を食べ終わった若い娘は、血を流している坊さんの足を見ながら呟く。)

娘「もってぇねぇぇぇ・・・・・」


(娘が立ち上ろうとした途端、老婆が娘の手をグッと掴んで引き止める。)

老婆「今夜はやめとけ、明日じゃ・・・」

娘「ちょっと、あ・・味見するだけじゃっ。」

老婆「我慢せぇ・・・・・おらだって我慢しとるんじゃ。

   今夜はおとなしく、寝ろ。分かったなぁ・・・?」

娘「あぁ。わ、・・分かった。。」







こうしてみんな眠りにつき、家の中は四人の寝息だけが

静かに聞こえるようになった頃・・



(ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・と、何かを舐めるような音がする)



坊さん「あわわわわわわ・・・・くわあああ・・・・」



(坊さんがガバッ!と布団をはねのけると、何と老婆が自分の足から出ている

 血を舐めていた!!慌てて逃げ出そうとする二人の坊さん)




老婆「何処へ行くぅーー!??」


坊さん「あぁあのその、小便が溜まったのでちょっと、外で・・・」

坊さん「わっわっわしも、小便・・!」


老婆「戸は、開けっ放しにしておけぇぇよ・・・」



(悲鳴をあげながら一目散に逃げていく坊さん達)

坊さん「うわぁぁ・・ぅああぁぁ・・・!」




(不満を隠しきれない様子で老婆を問いただす娘)

娘「おらには我慢せいと言っといて、ずるいでねぇーかぁー?」

老婆「ちょびっと味見しただけじゃ、ウへへへへへへ。」




娘「・・・おら今夜食うぞ。・・・食いだめじゃー。」

老婆「これ待てぇぇー。

   ・・・まぁ、ええか。食いだめも悪かぁー・・ねぇ。」


(娘が家の外に出てみると誰もいない。辺りを見回す娘。)


娘「坊主がおらん!逃げたぞぅー・・!」








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