老婆「わぁぁぁぁぁおおぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
娘「いやーーーーぁぁぁぁぁああああぉぉぉぉぅぅぅっ!!!」
(物凄い叫び声をあげて坊さん達を追いかける二人。その後ろには狼の群れが!)
ガウガウガウガウガウガウッ!!!!
逃げる二人の後からは・・・
狼どもの群れが、ほとばしる水のような勢いで追いかけてきました・・!
ところが、二人の行く手は断崖絶壁・・!
下は底の知れない深い谷で・・一歩も前には、進めないのでした・・!
大きな松の木に登ろうとするのですが、幹が太すぎて登れません・・!
仕方なく二人は・・松の枝からぶら下がっている、一本の蔓(つる)に
しがみ付きました・・・・!
ガウガウガウガウガウゥゥッッ!!
狼が襲い掛かると、二人は悲鳴をあげて飛び上がりました・・!
するとどうでしょう・・・!
二人は、断崖から離れて空を切り・・・
ぐーっと・・谷の方に、ぶら下がってしまいました!
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・!!」
二人はもう・・無我夢中でなんまいだぶなんまいだぶと、念仏を唱えながら・・
しがみ付いていた蔓を手繰(たぐ)り、登ってゆきました。
そしてやっと・・・松の枝に取り付くことが出来ました。
老婆「わあああぁぁぁぁおおおおおぅぅぅぅぅーーーーーっ!!!」
ガウガウッガウガウガウッガウガウガウガウガウッッッ!!!
そして婆さんと娘は・・・狼たちに命じて、狼ばしごを作らせました。
狼の上に狼が乗り・・その上にまた狼が乗るという風にして、
二人が乗っている松の枝まで届く、はしごにしたのですが・・・
その枝までは今少し・・長さが足りません・・!
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・!!」
(狼ばしごのてっぺんから、雄叫びをあげて二人の坊さんに向かってジャンプする老婆!)
老婆「あああああぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅ!!!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
(しかし二人には後一歩のところで届かず、深い谷底に真っ逆さまに落ちる)
老婆「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛━━━━━━!!!」
(二人の坊さんは震えながら念仏を唱え続けている)
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
(老婆が落ちた谷底を見つめてから、悔しそうに二人を睨み付ける娘。)
娘「・・・くぅぅ・・・・うっ・・」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
(思いつめた表情の娘。
そしてついに、狼ばしごの後方から助走をつけ、はしごを一気に駆け上がり
老婆より大きな雄叫びをあげながら二人の方へ向かって思いっ切りジャンプする!
その反動で狼ばしごは崩れ、狼たちは次々と谷底へ落ちていく・・・)
娘「ぇいやああぁぁぁぁ━━━━━━ぁぁぁぁぁっ!!!
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ!!」
(しかし・・・
勢いをつけすぎたせいで、娘は二人の頭上を飛び越えてしまう!)
娘「うわあ━━━━━ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ.......」
人の姿をした二匹の化け物は・・・
闇をつんざく悲鳴をあげて・・
狼の群れ共々、深い谷底へと落ちていきました・・・。
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・」
坊さん「なんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶなんまいだぶ・・・」
恐ろしい一夜が明け・・・・朝になっても二人の坊さんは、
まだ・・・念仏を唱え続けておりました・・・。
念仏を唱えながら二人の坊さんは・・・
化け物の、人を食うことへの妄執の恐ろしさと・・・
持って生まれた化け物の、あさましい業の深さを思う時・・・
深い・・・哀れみをも、感じたと言うことです・・・・。