(ナレーション:常田富士夫さん)
むかーし昔、屋久島の山奥には・・・山姫という者が住んでおったそうじゃ。
山姫は大変美しい女子(おなご)で・・・
山姫に出会って、山姫が笑うのにつられてついうっかり笑い返してしまうと・・・
2度と、山から帰ることは出来んと言われておった。。
(家の中に2人の男がいて、竹細工を作りながら話をしている)
太助「喜助!まだ竹はー・・・あったかいのぅ?」
喜助「いやぁ、もう残り少のぅなった。外に立て掛けてあるだけじゃー。」
太助「じゃあー、明日にでも、山に竹取に行くかぁー?」
太助と喜助という・・この二人の若者はようやく一人前になったばかりの、
竹細工の・・・職人なのじゃった。
(竹を取るための道具をかついで山道を歩く2人。)
太助「のぉー喜助、わしらもそろそろ、大物の細工物を作ってみたいのぉー。」
喜助「そうじゃのー。しかしそれには大竹(おおだけ)がいるぞーぅ。」
太助「なぁに、こんだけ雨の多い島じゃ。
山の奥の方へ行けば、大竹なんぞ幾らでもある。」
喜助「そうじゃなー。大竹で細工物作れば、高い値で売れてー・・・
一儲けできるのぉ。」
太助と喜助は・・・こんなことを話しながら、宮之浦の向こうの・・
地獄段と呼ばれる谷の方へ、登っていった。
(2人が歩いている山道の両脇に、太い竹が沢山生えている。
それを見て足を止める喜助)
喜助「のぅ太助ー。ここいらの竹でどうじゃー?」
太助「いやぁ、この位の竹なら、そこいらで幾らでも手に入る!
もっと奥に行かにゃー、駄目じゃ」
喜助「じゃがこの先はもうすぐ・・地獄段じゃー。
・・これ以上ー奥へ入ると、山姫がでるぞぅ。」
太助「なーに、出たら出たでそん時じゃ!
ここで弱気になったんじゃ、一儲けも出来んぞー。」
(太助はどんどん歩いて行ってしまう。)
(喜助は迷っていたが1人ぼっちにされてはたまらないと
慌てて太助の後を追いかける。)
(黙々と山道を登り続ける2人。
しかしついに我慢できなくなった喜助は、太助の肩に手をかける。)
喜助「太助ー、やっぱり引き返そうやー。
わしゃー何だか、気味悪ぅなってきたー。」
(太助は振り向き喜助の手を払う)
太助「何ぃ言うとるんじゃ。
一儲けしようと言うたのは、お前の方じゃろうがー。」
太助は喜助の言うことには構わず・・・
島の者が誰一人として入ったことの無い、地獄段の方へと進んで行った。。。
喜助も置いていかれてはたまらんと、一生懸命太助についていった。。。
(急な斜面を登る2人。先に登りきった太助が、目の前を見て声を上げる)
太助「あ!あー、あったー!」
2人の目の前には、深い森の茂みに囲まれた・・・見るも見事な、竹林(たけばやし)があった。
太助「何とー・・・・見事な竹じゃ!胴周りもこれなら三尺は、あるぞ!」
喜助「こげな太い竹わしゃ今まで見たことがねぇ!」
(2人は早速竹を切り倒そうと、竹に斧を打ち込みながら嬉しそうに話す。)
太助「わはは・・これでー苦労して来たかいがあったというもんじゃ!のぅ喜助!」
喜助「ははははは(笑)そうじゃのう!そうじゃのう!」
(2人が竹に斧を入れる音と、切られた竹が倒れる音が響く。)
太助と喜助は・・大竹の中でも特に立派なものを選んで、夢中で切っていった。。。