(ナレーション:常田富士夫さん)






昔昔、あるところに一人の六部どんが、おりました。







(六部が旅の途中、茶店の前を通りかかった時・・・)


茶店の女「もし六部どん。よかったら、一休みしていかない?」

六部「それはありがたい。」



(茶店の娘がお茶を出す)

太部「すまないねぇ。」



(茶を飲み、ほっと一息ついた後で、六部は立ち上がる)



六部「では姐さん、元気でな。」


茶店の女「六部どんも、気ぃつけてなぁー。」







(六部が暫く歩くと、黒雲がたちこめ雷鳴が鳴り響く)









六部「おおこりゃー雨が来るぞー。急がなくっちゃー。」





(雷が激しく轟いた後、雨が降ってくる)











六部どんは、土砂降りの中をやっと小さな村に・・辿り着きました。













(一軒の民家の軒先に走ってきた六部)


六部「・・・おぅおぅこりゃひどい雨だ。おぅ。」


ドンドンドン!(六部がその家の戸を叩く音)


六部「おぅい!宿貸して下せぇー。お願えしまーす!」


ドンドンドン!


(ガラッ!と乱暴に戸が開く。)


男「何だぁ六部か。ダ・メ・だ。今かかあが病気で寝てぇるで。」


六部「そこを何とか・・・!」


男「しつこいなー!ウチは宿屋じゃーないっ。」(男は戸を閉めてしまう)


六部「あぁー、もし・・・」












(諦めた六部はすぐ別の家に向かい、戸を叩く)


ドンッ、ドンッ、ドンッ!


六部「お願ぇーします宿を、貸して下せぇー!」


ドン、ドンッ!


(戸が開いてその家の奥さんが顔を出す)


奥さん「六部どんかい?雨のとこ気の毒だが、ウチは子供が多くて、
     人を泊めるどころで、ねぇのよ。ほらー。」


(六部が家の中を見ると子供が何人もいる。)


六部「ありゃー、これはまたぁー・・・」














(六部はこの家も諦め、少し離れた場所にある団子屋へと走る。
着いてみると一人のお婆さんが店じまいをしているところであった。)


六部「あっ、婆ちゃん!」


団子屋の婆さん「団子は、もうーお終えじゃが?」


六部「団子はもうええ。今夜ここへ泊めて貰えんかなぁ?
    ・・・この雨じゃー、野宿も出来そうにないでー・・・。」


団子屋の婆さん
「そうかい?そりゃ泊めてやりてえが?おら一人者だで、なんぼ六部どんでも男はダメだ。
・・・そうだ!この先に・・・じいさんばあさんの家があるで。そこ行ってー、聞いてみな?
このごろー・・・ばあさんは見かけんようじゃが、泊めてくれるかも・・知れんでぇ?」




(雷が鳴り響き、土砂降りの雨の中を教えられた家に向かう六部)














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